食事とこころの関係~こころにも栄養を~

受験生の食卓~心とからだをめぐる栄養コラム~
食事とこころの関係~こころにも栄養を~


「栄養たっぷりだからこれは食べた方がいいよ」

「栄養をつけないと体調を崩してしまうよ」


何気なく使う「栄養」という言葉について、考えたことはありますか?!


「栄養」というと、たんぱく質、ビタミンなどの成分が思い浮かぶかもしれませんが、それらは「栄養素」といい厳密には「栄養」とは異なります。



では?!
一体「栄養」って?何なのでしょうか??


栄養とは

体づくりや生命維持のために必要な栄養素を食べ物から取り入れ、それを体内で利用する一連の流れを「栄養」といいます。




ここで注目してほしいのが「生命維持」。

心臓や脳などの器官が動いていることが「生きる」では、味気ないですよね。



私たちは様々なことから「楽しみ」を得て生きています。

そのうちのひとつを担うのが「食事」です。



食事の役割

食事には以下のような役割があります。

    1.空腹感を満たす
    2.生命維持に必要な栄養素を取り入れる(エネルギー源)
    3.骨や筋肉、血液など体をつくる
    4.体調を整える(感染症予防、抗ストレスなど)
    5.楽しむ(料理、雰囲気、コミュニケーション)
    6.教育(しつけ、伝統、健康)

こういった役割は「生きる」ことに対して明確に振り分けられているわけでなく、体とこころに複雑に関わり合っています



長い前置きになってしまいましたが、テーマである「食事とこころ」について掘り下げていきます。

こころとは

「こころ」はどこにあって、そもそも何でしょうか?
どうやら諸説があるようです。



緊張すると胸がドキドキする。
嬉しいことがあると心が温まる。

こういった経験から「こころ=心臓」だと考えられていたのは、はるか昔のこと。


そこから研究が始まり………


今では、意識/無意識、行動、脳の働きのことを総合して「こころ」と捉えるようになったそうです。





受験に挑むには、この「こころ」をいかに整えるかが大きなポイントになります。



食事とこころの関係

長い受験期を乗り切るために必要な「こころの安定」

こころの安定とは「イライラしない」「集中できる」「リラックスしている」こと。

この、こころの安定を保つためにどんな食事(栄養素)が必要なのかを見ていきましょう。

炭水化物(糖質)

脳のエネルギー源である糖質。
糖質は食物繊維とともに炭水化物を構成している栄養素です。

糖質が不足すると、頭がぼーっとしたり、イライラしたりします

糖質とは、ごはん(米)、パン、麺類、シリアル、いも類に含まれているので、いわゆる「主食」は欠かさず食べることがベストです。

気を付けてほしいのが、砂糖やはちみつ、お菓子、ジュースなどから「甘味料」をとりすぎないこと。
これらは血糖値が急激に上昇した後、急激に下降する「低血糖」を招きやすく、体調不良やイライラの原因となってしまいます。





たんぱく質

たんぱく質=筋肉の材料というイメージが大きいと思いますが、ホルモンや免疫、神経伝達物質の材料でもあります。
なかでも、神経伝達物質であるドーパミン(やる気アップ)やセロトニン(リラックス)はこころの安定にとても重要です。

たんぱく質は、肉、魚、卵、大豆製品などの「主菜」に含まれています。

時間がないからといって「おにぎりやうどんだけ」のように主食に偏ることがないように気をつけましょう。





ビタミンB群

ビタミンB群は、たんぱく質を分解して神経伝達物質を作るのを促進し、糖質をすばやくエネルギーに変換するのに不可欠です。

肉・魚・卵など、いわゆる「主菜」や、玄米などの未精製食品に多く含まれています。





ビタミンC

ストレスを感じているとき、体内ではビタミンCが大量に消耗されています。

ビタミンCは野菜や酸味のある果物(柑橘類、いちご、キウイなど)に多く含まれています。
このような野菜は毎食摂取しましょう。

食物繊維、発酵食品

「脳腸相関」といって、脳と腸が自律神経を介して互いに影響しあうもので、例えば緊張するとお腹が痛くなったりするのはそのためです

また、腸内環境が悪化すると抑うつや不安などを招くこともわかっています。

腸内環境を整えるためには、食物繊維を含む野菜、きのこ類、海藻類や、腸内細菌を増やす発酵食品(ヨーグルト、納豆など)を日常的に食べるようにしましょう。







食事で、こころを整えるためには、栄養素だけではなく、楽しんで美味しく食べることがとても大切です
学校などではまだまだ黙食が推奨されているので友人と、というわけにはいきませんが、できる限り家族で食卓を囲んで会話を楽しみ、自分の趣向にとらわれず満遍なく何でもよく噛んで食べることが心身の健康につながります。





次回のテーマは「受験前日と当日の食事」です。
更新は 12/20(月)を予定しています。
どうぞお楽しみに!


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text by後藤優子/Yuko Goto
プロフィール:スポーツ栄養士×アスレティックトレーナー。ジュニアからトップアスリートの食事サポート、調理イベント、子どもの食育セミナーなどを行う。東京を中心に活動中。アイドルとカレーが好き。



後藤優子さんのコラム⇒「食×スポーツ(人生を豊かに。マルゴトキカク。」